分かってもらわなくてもいい 病院内事務職 川又さんの場合
僕はサッカー命の学生生活だったんです。でも、けがをしたんで、選手は諦めたんです。大学では、学生トレーナーとしてサッカー部に所属していました。その時に出会ったフィジカルトレーナーとして来ていた社長さんに誘われて、就職と同時に上京しました。
午前中はデイサービスに行って仕事をし、午後からはサッカー部などのスポーツトレーナ、そのあと会社に戻って書類処理とかしていました。仕事はとても忙しかったです。朝早くから夜遅くまででしたね。だからプライベートの時間は、起きて寝るだけみたいな日々でした。さらに2年目から店長になったので、他の人よりも業務が多かったですね。週1日の休みも、高校の試合に同行したりしてなくなる感じ。ご飯をゆっくり食べる時間なんてなくて、毎日、送迎の合間にコンビニ弁当をかき込んだり。休み時間でさえも、仕事に追われてましたからね。しんどかったですよ、本当に。精神的にも体力的にもきつかったです。でも、やりたい仕事だったので楽しかったんです。さすがにそろそろ辞めようと思っていた矢先だったんですね、病気になったのは。
大学の時に心臓の人工弁をつける手術をしたんです。その時は、手術したんか? って思うくらい生活は全く変わらなくて。今回の発症は、そこに細菌がくっつき、血栓ができて、脳にとんで詰まったんです。原因は分かんないですが、ストレスとかで免疫力が落ちていたのかもしれません。突然、高熱が出たんですが、その時はまだしゃべれたんです。入院する時はふらふらしながらも歩けてましたから。でも、翌朝、全く声が出なくて「あれ? なんだこれ?」ってなりました。会社に電話しようとしても、スマホのパスワードも分からないし、もうそのあたりから、記憶もあまりないです。血栓を溶かす治療をしたのですが、血栓がどんどんできちゃうんです。根本にある心内膜炎を治さないとだめだってことになり、それがちょっと特殊な治療だったので、別の病院に転院しました。それから、数日して、意識が戻ったかな。管だらけで、鼻から栄養を入れてました。右手足も動かなかったですね。手術が成功したってことで、また元の病院に戻って1ヶ月ほど経過観察し、そのあと、リハビリ病院に転院しました。歩けるようになったのは、結構早かったんですが、手の麻痺には少し時間がかかったかな。でも、言葉だけが戻らなくて。その後遺症は今もまだ残っているんです。リハビリ病院に入院している時に「あ、これは元の仕事に戻るのは無理だな」とすぐに感じました。だから仕事は何でもいいから、とりあえず働くことがリハビリだと思って、仕事につきました。
インタビュー記事
念願の仕事に就いた途端の受傷
川又さんは、学生時代から目指していた仕事に就き、その大事なキャリア形成中に障害を負うことになってしまった、非常につらいケースの当事者です。
職種はアスレティックトレーナー。念願の資格を取得し、実務について2年半での受傷でした。
「大学は健康スポーツ学科で、アスレティックトレーナーの資格取得を目指して勉強していたんです。スポーツトレーナーにもいろいろありますが、アスレティックトレーナーというのは、選手に対してその競技に必要なパフォーマンスを上げるためのトレーニングを提供したり、故障後の競技復帰を支えたりする仕事です。選手が怪我した場合、はじめは手術などをした後にPTがリハビリしますが、そこまでは基本的に体を動かすためのリハビリ。その後がアスレティックトレーナーの出番で、スポーツのパフォーマンスを上げるために特化したリハビリを提供する仕事なんです」
在学中は強化指定のサッカー部に学生トレーナーとして所属。卒業後は、そのサッカー部に外部からサポートに入っていたフィジカルトレーナーが社長を務める会社に就職することになりました。
「資格は大学四年で取得。他にも一社、候補はあったんですが、一番やりたい仕事ができる会社でしたからね。目指していた仕事だったので充実はしていましたが、寝る時間もほとんどない、精神的にも肉体的にもきつい仕事でした」
入社一年目は午前中にデイサービスの仕事をして、午後に高校でサッカー部選手のフィジカルトレーニングやリハビリ、会社に戻ってから雑用というスタイルでしたが、二年目からは早くも二つある事業所の一つで店長を担うことに。
「午前中も午後もデイサービスをして、夕方から高校の仕事。やはりほとんど雑用はできないので深夜まで仕事をするきつい状況でした。週一回の日曜休みも高校の試合があって休めませんし。しんどかったですよ、本当にもう。でも、経験のためにもここで三年間は続けてから、新しいスポーツトレーナーの仕事を見つけようと思っていたんです」
川又さんが倒れたのは、そうして転職の目途をつけていた三年目の途中のことでした。
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