自分以外の当事者を支える仕事がしたい イベント運営会社 Nさんの場合

7歳で発症、なんとなく自分は周囲の人と違う、普通に憧れるNさん
脳動静脈奇形は、若年層でも発症する可能性が高い病気です。高次脳機能障害を抱えながら学習・成長をしていくNさんですが、自身で障害を語れるまでに年数がかかりました。説明できるようなっても、これまで就労の場での理解を得ることが出来ていません。

専門家による寸評

脳神経外科医中居康展

 脳神経外科は、脳神経系の疾患で主に外科的治療を行う分野とされており、脳卒中の患者さんを扱う機会が比較的多くあります。しかしながら外科的治療が一段落すると、その後遺症についてはリハビリテーション科に任せて直接関わる機会が激減するため、長期間のフォローアップを行う機会はさほど多くないのが現状です。
 脳動静脈奇形のような特殊な疾患の場合、若年者に発症することが多く、診断・治療の特殊性か...

専門家による寸評

文筆業鈴木大介

 本冊子初の学齢期発症であるNさん。取材前は受傷以前に積み上げたキャリアがないことや、障害を抱えつつ発達・生育してきた経緯から、中高年発症の当事者より「自己理解力が高く喪失感も少ないのでは?」という推測を立てていましたが、浅はかな推測を見事に裏切られた今回の取材でした。

 高い自己理解力と具体的な援助希求スキルについては想像していた以上のレベルで驚きましたが、それがゆえに...

インタビュー記事

「普通」に憧れた日々

 7歳で左半身不随、同名半盲と高次脳機能障害を抱えることになったNさんですが、具体的に高次脳機能障害のことを知るのは、17歳になった頃のこと。「どうも自分は人と違う」という違和感を抱えながら生きてきたNさんにとって、「働く」ことは「他の人ができていること」という、憧れの印象から始まったようです。

「高校時代はお金より、周囲の友人同様にアルバイトをするという『ラベル』が欲しくてたまりませんでした。『普通』に憧れていたと言ってもいい。けれど、数十件応募したバイトのほとんどが不採用。やっぱり手が使えないのでレジ打ちでもできませんし、物を取り扱うにしても、たぶん手が動かないから、それは難しいっていうことで。でも基本は、障害があるって時点で、実際にどんな障害かは関係なく断られることが多かったなって印象です」

 唯一面接に受かったパン屋のバイトも、裏方の袋詰めやレジ打ちに挑戦しても、裏方の袋詰めが難しかったり、レジ打ちに挑戦しても無理で、三日で上司から申し訳なさそうな顔でクビを宣告されてしまったとのこと。

「私自身も申し訳なく、そしてできない事実を受け容れられずに、悔しくて泣きました。友人がバイトの給料で買ったというバッグを見るたびに羨ましくて……。高次脳機能障害の言葉を聞いた時は、よく意味は分からないけれど、思春期以降ずっと何かがうまくいかないと感じてきた違和感の正体だと直感できました。ショックでした。障害という原因があるのにそれまで自分のズレ(特に日常のコミュニケーション)を無自覚で生きていたことに腹立たしさや悔しさのようなものが一気に襲ってきました」

 こうして学齢期受傷のNさんの就労経験は、切ない体験から始まることになってしまいましたが、中高を通して障害を傍らに学生生活を経験する中、Nさんは臨床心理士として、障害を持つ子どものカウンセラーを目指したいと志を立てるようになり、大学の心理福祉学部へと進学します。

「在学中のバイトは、キャンプ場での清掃のバイト。カフェの裏方、図書館の広報室のバイトです。いちばん配慮していただけたのは図書館で、たぶんわたしに何ができるか考えてくださって、最初から本の整理とかの肉体労働でなく、本を読んで、書評とか新聞を作るような仕事をくれたんです。本当にありがたい。障害ゆえの働きづらさは、経験が浅かったのもあるのか、特に意識はしていなかったです」

 一年生の時からNPOでのボランティア活動などに積極的に参加するようになり、旅行を趣味とするなど活動的な大学生活を送っていたNさん。そんな彼女が本格的につまずいてしまったのは、大学二年生の時のことでした。

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